
Ladakh
Architecture
東京藝術大学大学院吉田五十八賞・杜の会賞・匠美会賞、第13回JIA大学院修士制作展最優秀賞、トウキョウ建築コレクション山本理顕賞
インドジャンムー・カシミール州ラダック
2014
インド、カシミール州ラダックは、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈の間のインダス河源流域に位置し、世界でも標高の高い高山地帯の一つとなっている。宗教においてはラマ教と呼ばれるチベット仏教に帰依し、文化大革命で破壊された中華人民共和国のチベット自治区よりも古い文化が良く残っていると言われる。 しかしながら現在、ラダックでは近代化に伴って新たな建築の形を模索しており、コンクリートによる無機質な都市ができてきているが、人々にはそうした近代建築はあまり受け入れられていない。 2ヶ月の調査を行う中でチャンタン高原の標高4,500mを越える遊牧地帯には病院がないために遊牧民の数が減っており、とりわけプガ谷という温泉が湧き出ている地域は、莫大な地熱エネルギーを蓄えた土地として世界的に注目されているが、今後の開発のされ方によっては遊牧民の生活を脅かしてしまう恐れがあること、また、伝統医アムチに連れられて病の治療に訪れる人がいるが保養場所が無いこと、遊牧民学校の子供が親と会う機会が無いこと等を知った。そこで、仏教僧院や遊牧民の地帯での調査と体験をもとに、遊牧民や旅行者、アムチなど様々な人の共有地として使われているプガ谷が、ラダック初の公共建築、さらに言えば“公共地域”となるような保養所を計画した。 計画にあたってはラダックの素材や構法を用いながら、大地で採取した色を設計に取り入れ、空間体験は新しいものにした。 本計画は現状で考えられるあくまで一案であり、実際にはその時々で部分に対応しながら全体を修正していくことが必要だと考えているが、ここで提案している近代的な都市計画手法でもなく、バナキュラーな自然発生でもない、フェイズによって段階的な発展をみる計画手法は、建築と大地がどのような関係をとるべきかを考えるきっかけになるのではないかと考える。