Stonewall Bench

Furniture, Prototype

岡山県新見市

2023

モルタルやコンクリートを用いずに石の自重とその噛み合わせだけで石垣を作る空石積みという技術がある。城郭の石垣にも使われた伝統的な技術であるが、中山間地の棚田や段畑などの農地ではその地域にある石を自分たちで積んでつくっており、その簡便さに反して適切に積めばすぐに壊れることはなく非常に長持ちするものでもある。仮に地震や大雨で多少崩れてもすぐに自分たちで修復できるといった生活の中にある身近な技術でもあった。
しかし最近ではその石積みを体験したことがある人も減り、古くなって崩れかかった石積みは放置されたりコンクリートに置き換えられたりし、空石積みの文化と伝統は途絶えようとしている。
一方で、空石積みという構法は現地にある石を利用するだけで構築可能であるため、人の手さえあればいつでも何度でもつくり、直すことができという、究極的に環境に優しくサステナブルな構法であり、現代においてその価値が改めて見直されている。
 
そういった石積みの風景と、それを支える技術の継承を目的として活動している一般社団法人石積み学校と、石を扱う職業としてその活動に共感する岡山県の足立石灰工業(株)と協働し、石積みの教育と普及のためにデザインしたのが石積みを利用したベンチ「Stonewall Bench」である。
 
高さのある空石積みを行うとき、石積みのための道具であるショウセンと呼ばれる鉄の棒などを石の隙間に差し込み、その上に板を渡してさらに高く石を積むための一時的な作業足場とすることがある。
その構造や方式を参照し、間にモルタルが充填されていない空石積みだからこそ存在する石の隙間に支持棒を差し込み、その棒に対して座面を固定することで石積みに対して浮遊して直接取り憑いたようなベンチをデザインした。
石の隙間は一定間隔ではないので、多少の誤差に対応できるように軸受側をパンチングメタルとし、その穴に棒を通すことで固定する仕組みとし、指示棒の支点の高さが自動的に異なるため、3本以上刺すことで回転せずに支持することができる。
支持棒は、積まれた石の重さのみによって支えられており、このベンチに座ることで、石積みの重量感や強度、堅牢さといったものを実際に体験することができる。
 
今までは石積みを体験するとしても都市部から離れた地域での石垣の修繕ワークショップなどに限られていたが、石積みというもの自体に単に崖を保護するだけでなくストリートファーニチャーとしての積極的な役割を付加することで、その軛から解き放ち、都市部やランドスケープの中などでも新たな需要を生み出すことができ、石積みの普及と新しい風景を作り出すきっかけとなることを意図している。
 
クライアント:足立石灰工業株式会社
アドバイザー:一般社団法人石積み学校

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