Spirits of Tripodity

Furniture

SaloneSatellite 2023

2023

ものは脚が3本あれば安定する。また、3点で支えれば地面が平坦でなくともバランスをとることができる。そのため3本脚のものは古今東西を問わずあらゆる文明で、容器や台、スツールなど様々な用途で姿を表している。シンプルで原始的な構成ではあるが、自然界には3本脚の生き物は見られず、神話の中や人工物にしか存在しない形である。古代中国では鼎として王位・帝位を象徴するものであり、古代ギリシアでは神への犠牲を捧げる鉢を支える三脚台といったように、特別な意味を持っていた。
私たちは三脚のオブジェクトが持つ、ありふれながらも特別であるという二律背反で両義的な性格の可能性を探求するために、どれもが共通して3つの脚を持ちながら異なる形態のルーツを持ったフロアランプ、スツール、ローテーブルの3つの家具をデザインした。

Pythia
このフロアランプは、古代ギリシアの都市デルフィの女神官であるPythiaが、神託を告げる際に座っていたとされる、霊気の立ち昇る岩の裂け目に置かれた三脚台をモチーフとしている。
上部に掲げられた器が、下部から照射される光を受けて輝き、周囲の空間をやさしく照らしだす。器や台にはものを置いたり飾ったりすることができるので、照明でありながら人はその隣に寄り添って共に時間を過ごす事ができる。

Senufo
西アフリカの先住民Senufo族は精霊信仰や動物崇拝の文化を持つ。一本の大きな木を削り出してつくられる彼らのスツールは、素朴な風合いとともにどこか生き物のように愛嬌のあるフォルムが特徴的である。そのsenufo族のスツールを再解釈して作り出したのがこのスツールである。3つの円錐の脚を重ね合わせることで、シンプルで力強い抽象的な形状ながらも肉感的で生き物のような独特の存在感を発揮する。薄いメタルシートを組み合わせてできているため見た目に反して軽く、どこにでも一緒に連れて行くことができる。

Lotus
このローテーブルは、蓮の葉のように3枚の薄い天板が寄り集まり、端が少し折り返されることで強度を保っている。3本の脚も同様に折り曲げた形状とすることで、天板を繋ぎ合わせながら支持している。蓮という植物は泥の中から生じながらも清浄で美しい花を咲かせることから、古代インドや古代中国では清浄さや神聖さの象徴となっている。このローテーブルも蓮のように軽やかな形状を持っており、置かれた空間に華やかさや祝祭性もたらす。

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